2017年03月18日(土)
3月11日:脳Know実践セミナー 『脳卒中患者の効果的なポジショニングの技』
晴れの良い天気に春を感じる季節になってまいりました。
皆さまお変わりございませんか?
脳Know実践セミナー「脳卒中患者の効果的なポジショニングの技」を開催しました。
とにかく、楽しかったです。知識を得ると同時に、看護の技を再発見できました!
講師は、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師 山添幸氏
摂食・嚥下障害看護認定看護師/NST専門療法士 永野彩乃氏
まず、講師の山添氏から、お話が始まりました。
基本的なポジショニングの定義や目的の確認。ポジショニングの原則としての「接触面をいかに広く持たせるか」「患者の安楽・安全」の意味をおさらいし、中枢性麻痺患者のポジショニングについて考えました。
脳卒中患者の多くが自らの意志表示が乏しいことから、患者が受ける負担や安楽の意味を理解し、看護師の行ったポジショニングに責任を持たなければならない、というお話は心に留まりました。
どんなときにも看護の本質に立ち戻って、自分の看護実践を振り返ることの大切さを改めて感じました。
<麻痺のある患者のポジショニングのポイント>
・麻痺側は体重が沈み込み体幹のねじれを生じる⇒全身のバランスが取れない
・麻痺側は筋力の低下のために体位の保持ができない⇒隙間への身体の沈み込み
・身体の適度な活動を妨げない⇒ピローの挿入位置や深さ
・不快感や疼痛は筋緊張を招く⇒「痛い!怖い!」という患者は身体失認が起こっていることを考えること。安楽への注意:シーツや寝衣のしわ、下肢の重なり、枕の高さや位置
・頸部のポジショニング⇒食べることを保証する。看護師にしかできない。
<体験編>
1、リクライニングポイントの理解=ギャッチアップの際の患者の位置(大転子部)合わせは基本中の基本!
2、ギャッチアップで身体がずれる=先にを上げると違う!
それぞれのベッドから「あー、ズレていく!」「10センチぐらいズレてる感じがする!」「こんなにシーツに引っ張られえている!」「足が挙がっているとズレている感じが少ない「「臀部が安定している」などなど。自分の体で学ぶことは大事ですね。
3、背抜き&足抜き=圧抜きは必須!
※ポジショニング手袋は優れもの!
ケアを受ける患者にとっては心地よく、看護師にとっては体にやさしく、という救世主です。
「背抜きは気持ちいい!」「リラクゼーション感覚」「これは、絶対やるべき!」「これはスムーズに滑る」といった声が聞かれました。
4、すべての動きには頭部が主導=向く方向に頭をセット:“目”が先に向き意識できる
「頭がそのままだと体の回転が大きく感じるが、頭を先に向く方向に向けておくと身体の回転感覚が小さくて安定している」「回る感じがしないので怖くないね」というように、知覚と身体感覚は連動しているということが分かりました。
5、点ではなく面で支える=安楽枕の使い方ひとつで圧分散
患者体験をして実感できたことが多かったですね。改めて、患者の立場に立つことの大切さを再確認しました。
もう一つの課題『安全においしく食べるためのポジショニング』
デモンストレーションを交えての講義でした。
講義の焦点は以下の3つでした。
① 食べるための準備(気持ちよく、食事に集中でき、楽しんで食べる)
ポイント:排泄は?手を洗った?テーブルの上は清潔?食事を見ることはできる?
まわりの環境は?
以上のことは、食事の援助(看護)をする看護師は基本的に“あたりまえの看護”ですね。
② ベッド上での食事時のポジショニング
ポイント:
腰の位置とベッドリクライニングポイントを合わせる
頭頸部経度前屈位(胸骨と下顎の間は4横指程度)
足底を安定させる
両上肢は肘の高さで安定させる
③ 車いす(座位)での食事時のポジショニング
ポイント:体幹が傾かない。背部と腰部の安定⇒座面の奥まで座り骨盤を起こす。
頸部の経度前屈位
膝関節は90度・足底が接地、高い場合は足台。
上肢の安定・テーブルは肘の高さ・肩の高さが水平
※足底が安定していると咳嗽や咀嚼や嚥下がしやすいというエビデンスがあることを紹介してくれました。しっかりと座るための看護が食べることにはとても重要であることを再認識しました。
患者の食べる姿勢(ポジショニング)を一つ一つ工夫し、手を抜くことなくやっていくことで、患者が自立的に食べることができる状況を創り出すことになると、永野氏は伝えてくれました。
※今回のセミナーに用意された資料に沿って講義演習は進められました。丁寧に作られた資料は、後で見返しても実践が確認できるようになっていました。この資料は間違いなく保存版です!!
13:00から始まったセミナーは16:00に終了となりました。3時間では短く、脳卒中患者がよりよく生活するために看護ができるポジショニングの技は奥が深い、と感じました。
ポジショニングというテーマには、これまでの研究会アンケートで取り上げてほしいという声が多かったのですが、その意味が分かったように思いました。
【 脳netサロン 】
場所を移動して、“サロン”に!
セミナーの参加者を含めてポジショニングの話やら、摂食嚥下認定看護師とSTとの協働に関してなど、お茶とお菓子をいただきながら1時間半ほど情報交換ができました。
登喜代表は、研究指導の依頼を受けていました。
臨床研究がもっともっと良いものになりますように。
そして、脳卒中患者の生活が少しでも豊かになりますようにという看護師の願いを込めた臨床研究をこれからも応援していきます。
指導を受けた臨床家の方からも、「先日の研修はありがとうございました。
分かりやすく、今後のスタッフ指導に活かしていきたいです。登喜先生には、看護研究の指導もいただきました。悩んでいた部分が明確化し看護研究を進めていけそうです。ありがとうございました。」とメールを頂きました!
6月には臨床研究の支援のためのサロンを開催します。ホームページで確認してください。
私たちの研究会が、皆様の役に立つのであればうれしく思います。
これから春に向かいます。4月からは新たな1年が始まります。
皆さま、頑張っていきましょう!