2017年12月26日(火)

第6回脳卒中ケア研究会:研修内容のご紹介

皆様、お待たせして申し訳ございませんでした。

2017年第6回脳卒中ケア研究会が、多くの参加をいただき無事に終了いたしました。

今回は、昨年度までの半日プログラムから一日プログラムへ内容充実を図りました。

午前中の【教育セッション】とそれを受けて午後からの【シンポジウム】という流れで、じっくりと議論できるのではないかという意図で準備を進めてきました。

事前参加登録は公開から2週間程度で80名の定員に90名を超えるという状況でした。

ありがとうございました。

さて、第6回のシンポジウムテーマは「臨床判断から始まる脳卒中ケア」でした。

 

まず、午前中の教育セッション:『画像を読み取る―看護実践に生かす臨床判断』

講師は竹末のり子氏(国立循環器病研究センター 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師)でした。

竹末氏は基盤となる“脳の解剖生理”の知識をしっかりと理解しておくことで症状の予測ができ画像の読み取りから看護ケアへとつなげやすくなると話します。ここでも、解剖生理の重要性が再確認できました。そして、“画像の読み取り”では脳梗塞と脳出血について代表的なCT像とMRI像を脳の機能分布とともに説明してくれました。そして、画像は発症からの時間経過の中で変化してくるのですが、その変化についてもわかりやすく説明してくださいました。最後は、やはり“看護ケア”です。画像を読み取ることで、患者の病巣(脳の損傷)と臨床症状がつながり、身体機能の障害と生活行動の関連、さらには残存機能の予後を考えることができるということでした。つまり、画像を読み取ることは、患者の症状を適切にアセスメントしていくため、あるいは必要な看護ケアの方法につなげていくための様々な情報の一つであるということです。

1時間30分の教育セッションでしたが、基本的な知識から様々な画像を確認していく中で、看護実践への示唆まで、アッというまで、本当に勉強になりました。

次に、午後からの事例検討:『脳卒中患者への臨床判断と看護実践』

実践事例(急性期)の講師は、山添幸氏(西宮協立脳神経外科病院 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師)でした。急性期病院のSCUで勤務する山添氏は、救急搬送された事例を通して、看護師と医師の関心や身体を観る目的の違いを明確に示しています。看護師の臨床判断の観点は、必要な看護ケアを明確にしてそれを実施するためで、医師の診断・治療の目的とは違うことをしっかりと認識しておく必要があるのです。事例はくも膜下出血。頭蓋内圧亢進を予防するケアや意識改善のケアを多面的に説明してくれました。“画像から患者の生活を看る”。急性期だからこそ患者の生活への影響を視野に入れた看護実践がなければその後の回復期にはつながっていかないことを実感しました。

実践事例(回復期)の講師は、小林重美氏(JCHO星ヶ丘医療センター 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師)でした。提示された事例は4事例でした。いずれも急性期を過ぎ、回復期に入った事例です。この時期になると画像はある程度安定的な脳の状態が読み取れます。回復期の画像が示す情報は、“脳の可塑性”への手がかりであるが、それ以上に身体症状と看護師の経験知(臨床力)によって患者を観て、“脳の可塑性”に期待かける。看護師の実践はゆっくりと患者の回復力・生命力に向き合う看護、あきらめない看護です。回復への変化を見せる患者を “あの人は俺の患者か?”と医師が驚いて二度見するほどだと話し、看護の可能性に確信をもって実践していくことに大きな意味があることを再認識できました。

引き続いて、シンポジスト3名を交えてのシンポジウムです。

会場からの質問や意見も活発で、良いディスカッションができたのではないかと自画自賛です。

そして、終了後のアンケートでは、「画像→治療→看護がつなげられた。」「画像が看護の在り方に影響することを知った。」「画像の読み取りとアセスメントが再確認できた。」「内容がとても分かりやすくすぐ臨床で使える。」「脳神経外科病棟に移動して2年目ですが患者さんとしっかり向き合えていなかったと反省。気づかされました。ディスカッションで工夫されているケアを聞くことができてよかったです。」「当たり前のことですが、看護ケアにとても熱心で患者様のことを思える先生方の講義が聞け、明日(今日)からも自分も頑張ろうと思えます。」「解剖生理からとても分かりやすく解説されており特に一番最初の講義が大変わかりやすく明日からの臨床で活かせると思いました。」「山添先生の講義がとても勉強になりました。画像や症状からのアセスメントの仕方や今ある状態に満足せずケアを行っていく大切さを改めて考えさせられました。」「回復期看護の小林重美先生のお話に感動しました。どのように観察してどう行動するのかとても勉強になりました。”あきらめない”という気持ちを私も持ってこれからの看護教育に活かしていきたいと元気をもらいました。」などなど・・・。80人以上の参加者の方々からご意見・ご感想をいただきました。

また来年も脳卒中患者の看護実践に役立つようなテーマを取り上げて開催したいと思います。

当日のスライドの資料をご参照の方は、以下のリンクから見ることが出来ます。

竹末氏

山添氏

小林氏

2017年11月19日(日)

大盛況の元、第6回脳卒中ケア研究会定例会 終了いたしました。参加して頂いた皆様、本当にありがとうございました。

大盛況の元、第6回脳卒中ケア研究会定例会 終了いたしました。参加して頂いた皆様、本当にありがとうございました。

足下も悪い中、最後のディスカッションまで、たくさんの方に来て頂き、スタッフ一同感謝しています。

詳細な内容は後日またお知らせする予定です。

来年も同じ時期に他のテーマで定例会を行なう予定ですので、よろしくお願いします。

 

2017年09月09日(土)

第6回 脳卒中ケア研究会 定例会のお知らせ

既にご存じの方もいらっしゃると思いますが、本年 11月18日(土)
「臨床判断から始まる脳卒中ケア」と題して
定例会を行ないます!

脳卒中ケアに関する画像の臨床判断を看護職の視点から教育セッション、シンポジウムを行なっていく予定です。

場所は前回と同様、大阪府看護協会桃谷センターです。

既にメールにて申し込み受付中です! HPのホーム画面の参加申し込みのボタンからお申し込みください。

定員もありますので、お申し込みはお早めにお願いします。

たくさんの方の参加をお待ちしております!

※ 前回の定例会から参加費や開始時間の変更がありますので、ご注意ください。

 

2017年07月20日(木)

暑い日が続きます【定例会についてのプチ情報】

関西は(関西も?)暑い日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 体調にはくれぐれもお気をつけください! 暑さ緩和のための涼しげな画像を提供致します。

さて、定例会の続報ですが、今年は初の試みで、午前中10:00もしくは10:30から画像判断に関するセッションを始め、お昼休憩のあと、午後から事例紹介、検討から看護実践へのシンポジウムを予定しています。

脳卒中の看護実践には、画像に関する判断が欠かせないと思いますが、ただ読むだけではなく、どうやってに看護に生かしていくかという議論を中心にシンポジウムを進めていきたいと考えています。

受け付け開始は後日となります。もうしばらくお待ちください!

2016年12月15日(木)

第5回脳卒中ケア研究会:報告

こんにちは。「脳卒中ケア研究会」からのご報告です。
11月19日(土)に開催しました『第5回 脳卒中ケア研究会』の様子をお知らせします。
今年のシンポジウムテーマは、「高次脳機能障害を生きる人たちの支援を考える」でした。
このテーマは、本当に関心が高く、あっと言う間に事前申し込みが100名を超えたほどでした。研究会でもある程度は予測していましたが、これほどとは思っていなかったのです。当日は満員という状況でした。今回申し込みができなかった方は、本当に申し訳ございません。どうか、このブログで感触を味わっていただけることを願っています。そうそう!当日の資料も入手できるので、それも合わせて確認してください。
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今回のシンポジストは以下の3名にお願いしました。(司会は登喜代表と日坂先生でした)
ちょっと写真が小さくてごめんなさい。

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山田祐子氏:奈良県総合リハビリテーションセンター 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師

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河地睦美氏:奈良県高次脳機能障害支援センター  支援コーディネーター

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山居輝美氏:甲南女子大学 看護リハビリテーション学部看護学科 講師

※山田祐子氏は、「高次脳機能障害患者の看護実践報告」というテーマで講演していただきました。
病院紹介から始まり、「高次脳機能障害」の基本的な知識をおさらいしてくれ、そして本題へ。認定看護師としての立場から事例を通して具体的実践を紹介してくれました。「60歳の男性 右被殻出血。」患者は半側空間無視をはじめ、注意障害や身体失認などなど、複雑な症状を呈する患者の看護です。そして「そのひとの世界をどれだけ想像できるか」が大きな看護のカギとなる。「問題点」を見つけることと同じくらい大事なのは「可能性」を見出すことだと話し、山田氏が看護で心がけていること、「私はあなたの味方」という姿勢・笑顔で聴くこと・触れること・ユーモア(何とか笑顔にしたい)・家族の支援(あきらめないで伝える)、を伝えてくれました。

※河地睦美氏は、「高次脳機能障害患者の支援活動の実際」というテーマで講演していただきました。
高次脳機能障害者への支援事業の組織とその内容について関連制度や法律に至るまで、丁寧に説明してくれました。そして、高次脳機能障害患者の本当の苦しみは社会生活の中で起こってきますから、福祉の充実は本当に望まれることなのです。高次脳機能障害患者が社会生活をスムーズにスタートさせるためには障害者サービスの支給申請を入院中に済ませておくこと。障害者サービスの中には経済的支援としての傷病手当金の支給も含まれる。そのために医師の診断書で申請が可能となることを知っていてほしいと話した。そして、インフォーマルなサービスとしての「ピアサポート・家族会・心のケア・レクレーション活動」などの利用も重要で今後進めていきたいとくくった。
※山居輝美氏は、「高次脳機能障害患者の研究の動向と研究報告」というテーマで講演していただきました。
1981年、高次脳機構障害に関する論文が発表され、看護の論文は1985年でした。今日までの31年間の研究内容を概観して説明し、特に、2006年から2016年までの10年間についてはさらに詳細な説明を加えてくれました。患者を対象とした事例研究では、排泄や退院・社会復帰に向けた援助の個別性の大きさを、家族を対象とした調査研究では、患者の環境が変化する際の家族支援の必要性、看護師を対象とした調査研究では、患者へのかかわりにおける看護師の直観や判断に関する研究や、看護援助の負担感や困難さに関する研究などが多い傾向が説明されました。また、山居氏は博士課程で取り組んでいる高次脳機能障害患者を対象とした研究活動の一部を紹介してくれました。

後半は、いつものように参加者の皆様とのディスカッションです。
やはり、具体的な看護実践や支援などに関する質問が多かったですね。シンポジストは難しかった事例やうまくいった事例事例などを紹介しながら意見交換は盛り上がっていました。
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そして、アンケートでは、
「共感できました。」「研究の視点も学べてよかった。」「内容がすごく濃くて、明日からも役立てられる内容がもりだくさんで良かったです。」「看護を見直すきっかけになった。」「患者の事を少しでも理解して関わっていきたい。」「患者さんへの対応が聞け、勉強になった。」「悩みが解決した。意欲があがった。」「ディスカッションで得ることができた。」
「看護について、もっと学びたかった。」「もっとディスカッションできれば良かったです。」「看護研究をした経験がないのでピンとこなかった。」という意見が聞かれました。
本当に、アッという間の4時間でした。また来年も興味深い企画を考えます。 

配付資料:

山田氏

河地氏
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