私は足の先がしびれるから、ひょっとしたらそれも頭の関係の、何か兆候があるんと違うかなぁって、思うんで、主人がやっぱしここで、一度診てもらう先生を見つけておこうか、ということで、このO脳外科にお世話になることになったんですよ。で、そのついでに私も足がしびれるから、それなら一緒に来て、診てくださいと言いことで、診ていただいたんですよ。
 私の方が、「先生、これで本当に分かるんですか?」って言うたら、先生が「それならMRIを撮ってみるか」っておっしゃったから、「それなら撮ってください」って言うて、撮ったのが、すぐに動脈瘤と分かって、先生が、ここに血管がこうなってるよっておっしゃられたから、でも、それを軽い気持ちで「あぁ、そうですか」って、それで、「もっとよく分かる方法で診ていただくんやったら」って言うたら、先生が、「カテーテルを入れんと駄目やなぁ」って、それで、カテーテルを受けたんです。
 MRIをしてからね。2ヶ月もかからへんかなぁ。それで、はっきりしましたよね。あるのが分かってるから、それで、先生に。結局、「これを放っておいたらどうなるんですか?」って聞いたら、「クモ膜下にはなると思います」って先生がはっきり言われたんですね。それなら、クモ膜下って言ったら、簡単に死ねばいいよ。死んでしまえば別に良いですよ。どこで、地方で死んでもかまへんのですけれど、中途半端は困るでしょ、結局家族にも迷惑ですし、私自身も嫌でしょ、それで、先生に、「これはどうしたらいいんですか?」って言うたら、「手術する方法があるよ」っておっしゃったから、そんなら、私は最初は、ちょっとぐらい切ってする手術やと思っていたんやね。そんでも、最終的にここまで切れへんかったら治れへん手術やってんけれど、それでも、今、その血管が膨れているのは3ミリぐらいな状態でね。で、なんか5ミリぐらいになったら、ちょっと、何かせんとあかんらしいね。切るか、コイルを入れるとか何か方法があるらしいですけど、「せんとダメですよ」って言われたから。そんで、「それは何年先とか分かるんですか」って言うたんです。そしたら先生が、「明日かもわからんし、これが5年か10年先かもしれない」っておっしゃったんね。それで、「先生、これは注射とか薬とかで治らないんですか?」って聞いたんですね。そしたら先生は「これはどうにも治りません」って言われたから、「それやったらやっぱり切らないとダメなんやね」って言うたら、「そうや」って言われたから、それは、なんかものすごく難しい位置にあったんですよ。目の後ろのところで。だからもう、紙一重。
 それで、「そんなら院長先生でもちゃんとしていただけたらありがたいです」って、それで、K先生に、「手術の時には先生はついてくださるんですか?」って聞いたら、「僕は間違いなく入ります」って言われたんで、「それなら、先生お願いします」って言って。それが、○月の29日に入院してもらわんといかんって、言われたんですけど、私は仕事を持っていたから、翌月の1日に入って、2日に手術をしていただきました。でもね。不安がないって言うたら嘘ですやん。それが、うまくいかなかった場合の、そら、先生は失敗なんかしはらへんやろうけど、「もし、うまくいかなかった場合は、先生どんなになるんですか?」って言うたら、やっぱし、「それは、片目が見えなくなると思う」って言わはったから、それでも、私は先生を、尊敬してるし、信頼してるから、「良いです。やってみてください。出来る限りのことをしてくださいね。」って言うたら、先生が、「出来る限りのことはするから、そんなに心配せんでもいいよ」って言いはったから、「ほな、してください」って言うて、私はほんまに簡単に思いました。
 …あのー、それはね、先生が注射も薬も効けへんって言いはった時点で、「先生にいつかは破裂するんですね」って言ったから、その時に、「いつ破裂するかは、僕のあれでは分からへん。それは、明日かも分かれへんし、5年後かもしれへんし。」って。でも、私はその日本中廻っているような仕事をしてるから、どこでそんなんことになっても嫌でしょ。だから、この際、ここの病院やったら、自分は近いし、安心できるのね。それで、私は、あのK先生のことがすっごく好きなんですよ。信頼してるのよ。だから、「先生がしていただだけるんやったら」っていうことで、「ウン」って言ったんです。」最初にね、あの先生やったら、「何を聞いても怒りはれへんなぁ」って思ったから、聞いたら、先生も「こうやで」ってはっきりと、ごまかさんと、病名でもなんでもはっきりと「こうなる」って言わはるから、私なりに、覚悟を決めないといけませんやん。そんなん、「さぁなぁ、わかれへんなぁ」って言われてたら、そんなん、わざわざ痛い目して、そんなんする必要ない、って思いますやん。
 もう3ミリまでなってるからね。確率はものすごく低い、って先生は言いはったんやけど、2%とか3%とか、それでも、私は仕事がら全国を廻っているから、どんなところで悪くなっても困るの。それが第一番にありましたね。全然知らない土地で寝て、そんなん嫌ですやん。で、私はK先生ほどの先生が、自分が何でも言える先生が他にいるとは思っていないから、うん。だから、97%か98%はひょとしたら破裂しないかもしれへんって。でもね、私はね、それがね、おそらく破裂すると思ってましたね。その時は…瞬間はやっぱし、ショックでしたけど、でも、私は前向きにモノを考える方やから。だから先生に、「注射で治らないんですか?」って聞いたら、「それは無理や」って言われたから、私は予防できるものは、何でも予防してる方が賢いと思うのね。病気でも分かってて。だから、本当のことを言っていただく方が、覚悟ができるでしょ。人間覚悟して、それがダメな人はいるやろうけど、私の場合はそれで覚悟ができますからね。それで、先生が今でも診てくれてはって、「良くなってるよ」って、言われたら、「あぁ、先生そうなんですか」って言ってそれで終わりでしょ。私としては、覚悟を決めたらやれるんです。
 頭を切るなんか想像をしてなかったからね。今までの歳でね。でも、やっぱし、先に見つけていただいたことはありがたいとは思ってますよ。私は今のことよりも先のことを考えるから、…家族に迷惑かけるとか。いろんなことがあるでしょ。それのことを考えたら、今しておく方が、みんなにも迷惑かけずにすむし、とかいろんなことを考えてするから。それで、やっぱし、良い先生との巡り会いが一番と違いますか?…もう、先生に安心してお願いしますって、言えるね。
 やっぱり考えますね。よう開けたなぁって思いますけど、でも、やっぱし、それがクモ膜下につながるって言われたら、それならずーっと、ドキドキして、ずーっと居ないといけないわけでしょ。いつ破れるかのか分かれへんことやからね。それは、知った以上は意識しますよね。もし破れたら、私なんかはこんなお仕事してるでしょ、どんな病院に入るかわからへんし、ほんで、全然、ところによっては言葉もちがうじゃない。ここらへんとは違うでしょ。言ってることが、パッと相手に分かる、看護婦さんにしろ、何にしろ、パッと伝わらないでしょ。そんなら、やっぱし困りますよ。
 重い物を持つのは止めました。それは少し加減しました。力の入ることね。それ以外はないですね。別にね。だからね、忘れてる時と、フッと思い出す時と、それで、重たい物を持つのは止めよう、力が入るからですね。あとは、仕事で飛び回ってましたからね。
 だから、1日の日に入って、2日に手術してもらうんやから、そんなん何も考えている暇はないんです。1日の日も昼からの入院でしたから、午前中に入院するための道具をパパパッとまとめて、だから、入院するのに持っていく物を忘れんようにする、それだけでいっぱいでしたから。だから、かえって良いんと違いますか。これが、1週間も2週間も待たされて、病院でずーっと入院してて、この日にしますよって、ずーっと待たされるのは、やっぱし、嫌よ。きっと。人のいろんな事も聞くでしょ。痛かったとか。そんなん私らは人の聞いている暇はないもん。もうー、夕方からカテーテルしてもらって、先生がもう一度はっきりした場所を見届けたいから、って言いはって、それで、あくる日の9時になったら入りますよ、って言われて、「はい」って言うたら終わりでしたからね。
 そんなんは、調べたりしません。先生が言ったことはそれで、良いんです。私はK先生を尊敬してるし、あの先生の言われることで、結構です。100%ね。別に、動脈瘤がどうなるとか、他の先生に調べてもらったら違うかもなぁ、なんて、そんなことは全然考えません。私は、出会いの問題で、ここでも、いろんな先生ともお目にかかったけど、私は、K先生が良いと、自分で思ったんです。だから、先生にお願いします、って思ってるから。それで良いんです。先生に言ってそれで納得なんです。先生が「これで良いんやで」って言ってくれたらそれで納得なんです。先生が言ってくれてそれが分かったら納得です。
 でも…やっぱし、頭を切るというのは今思えばすごいことですね。してしまってからすごいことやねって、思ってるだけで、それまではそんなにすごいことやとは思っていないんです。バタバタしてたしね。そうそう。やっぱし、大きな経験ですね。これはね、持ってて良くなるんやったらんね、持ってるけど、良くはならないんやから、うん。破裂してからやと遅いからね。思い切らないと仕方がないでしょ。結果良しということですね。
 それで、最後は自分やからね。「そこで止めます」って言ってもいいんやからね。だから、なんぼ先生に任せても最後は自分やからね。私はクモ膜下になる前に、先に考えたことは、分かってて目が見えなくなるのと、「急にパッと目が見えなくなるのとやったら、どっちが良いかなぁ」と思ったんです。そうしたら、分かっててなる方が心づもりがあるやんか。ダメで良いことはないけれど、急に見えへん、どうしようと思ってもどうもなれへんでしょ、そんなことね、だから、そうやなぁって思ったんですよ。