2016年12月15日(木)
第5回脳卒中ケア研究会:報告
こんにちは。「脳卒中ケア研究会」からのご報告です。
11月19日(土)に開催しました『第5回 脳卒中ケア研究会』の様子をお知らせします。
今年のシンポジウムテーマは、「高次脳機能障害を生きる人たちの支援を考える」でした。
このテーマは、本当に関心が高く、あっと言う間に事前申し込みが100名を超えたほどでした。研究会でもある程度は予測していましたが、これほどとは思っていなかったのです。当日は満員という状況でした。今回申し込みができなかった方は、本当に申し訳ございません。どうか、このブログで感触を味わっていただけることを願っています。そうそう!当日の資料も入手できるので、それも合わせて確認してください。
今回のシンポジストは以下の3名にお願いしました。(司会は登喜代表と日坂先生でした)
ちょっと写真が小さくてごめんなさい。
山田祐子氏:奈良県総合リハビリテーションセンター 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師
河地睦美氏:奈良県高次脳機能障害支援センター 支援コーディネーター
山居輝美氏:甲南女子大学 看護リハビリテーション学部看護学科 講師
※山田祐子氏は、「高次脳機能障害患者の看護実践報告」というテーマで講演していただきました。
病院紹介から始まり、「高次脳機能障害」の基本的な知識をおさらいしてくれ、そして本題へ。認定看護師としての立場から事例を通して具体的実践を紹介してくれました。「60歳の男性 右被殻出血。」患者は半側空間無視をはじめ、注意障害や身体失認などなど、複雑な症状を呈する患者の看護です。そして「そのひとの世界をどれだけ想像できるか」が大きな看護のカギとなる。「問題点」を見つけることと同じくらい大事なのは「可能性」を見出すことだと話し、山田氏が看護で心がけていること、「私はあなたの味方」という姿勢・笑顔で聴くこと・触れること・ユーモア(何とか笑顔にしたい)・家族の支援(あきらめないで伝える)、を伝えてくれました。
※河地睦美氏は、「高次脳機能障害患者の支援活動の実際」というテーマで講演していただきました。
高次脳機能障害者への支援事業の組織とその内容について関連制度や法律に至るまで、丁寧に説明してくれました。そして、高次脳機能障害患者の本当の苦しみは社会生活の中で起こってきますから、福祉の充実は本当に望まれることなのです。高次脳機能障害患者が社会生活をスムーズにスタートさせるためには障害者サービスの支給申請を入院中に済ませておくこと。障害者サービスの中には経済的支援としての傷病手当金の支給も含まれる。そのために医師の診断書で申請が可能となることを知っていてほしいと話した。そして、インフォーマルなサービスとしての「ピアサポート・家族会・心のケア・レクレーション活動」などの利用も重要で今後進めていきたいとくくった。
※山居輝美氏は、「高次脳機能障害患者の研究の動向と研究報告」というテーマで講演していただきました。
1981年、高次脳機構障害に関する論文が発表され、看護の論文は1985年でした。今日までの31年間の研究内容を概観して説明し、特に、2006年から2016年までの10年間についてはさらに詳細な説明を加えてくれました。患者を対象とした事例研究では、排泄や退院・社会復帰に向けた援助の個別性の大きさを、家族を対象とした調査研究では、患者の環境が変化する際の家族支援の必要性、看護師を対象とした調査研究では、患者へのかかわりにおける看護師の直観や判断に関する研究や、看護援助の負担感や困難さに関する研究などが多い傾向が説明されました。また、山居氏は博士課程で取り組んでいる高次脳機能障害患者を対象とした研究活動の一部を紹介してくれました。
後半は、いつものように参加者の皆様とのディスカッションです。
やはり、具体的な看護実践や支援などに関する質問が多かったですね。シンポジストは難しかった事例やうまくいった事例事例などを紹介しながら意見交換は盛り上がっていました。
そして、アンケートでは、
「共感できました。」「研究の視点も学べてよかった。」「内容がすごく濃くて、明日からも役立てられる内容がもりだくさんで良かったです。」「看護を見直すきっかけになった。」「患者の事を少しでも理解して関わっていきたい。」「患者さんへの対応が聞け、勉強になった。」「悩みが解決した。意欲があがった。」「ディスカッションで得ることができた。」
「看護について、もっと学びたかった。」「もっとディスカッションできれば良かったです。」「看護研究をした経験がないのでピンとこなかった。」という意見が聞かれました。
本当に、アッという間の4時間でした。また来年も興味深い企画を考えます。
配付資料:
山田氏
河地氏