2024年12月25日(水)
今年度の脳卒中ケア研究会は、「日本脳神経看護学会関西地方部会研修会(部会長 梅田 麻由)」の共催という形で、千里金蘭大学で2024年11月30日(土)に開催しました。参加者は27名でした。
研修会のテーマは『見直そう!脳神経患者の早期離床に向けた臨床判断と実践~診療報酬改定を受けて』と題して、「診療報酬改定に伴う看護活動」「術後超急性期から早期離床につなげる臨床判断と看護の実際」、そして「早期離床に関する知識と技術」の3部構成で企画しました。
まず、「診療報酬改定に伴う看護活動」の講演には、多根総合病院の脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の應本勝美氏に登壇いただきました。應本氏は、令和6年診療報酬改定に伴う看護師が知っておきたいポイントをわかりやすく示してくれました。そのポイントの一つとしては、看護必要度の見直しにおいて、急性期一般入院料1でB項目が削除される点です。つまり、看護必要度の評価から日常生活行動に関連した看護実践が含まれなくなります。一方で、急性期のリハビリテーションや栄養管理・口腔管理の取り組みの推進が新たに評価の対象となります。まさに早期離床への取り組みが明確に見える化される活動が医療報酬につながること意味します。この見直しによって、急性期看護において看護本来の活動としての生活行動の援助は評価されないが、援助しないわけにはいかないという看護師のジレンマが生じかねない状況が危惧されます。そのような中で、今後の看護活動に求められるものを應本氏は「連携」と「柔軟性」がキーワードだと話されました。今回の診療報酬改定を機に変化する社会に対して看護活動には「柔軟な」対応力、そしてリハビリテーションや栄養管理において多職種との効果的な「連携」ができる力が求められると話されました。
次に、「術後超急性期から早期離床につなげる臨床判断と看護の実際」は、国立循環器病研究センターの脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の竹末のり子氏が急性期リハビリテーション看護の進め方について実践事例を交えて看護の実際を紹介していただきました。
竹末氏は、早期離床を行うための患者のアセスメントの視点を4つ挙げています。①病態と治療状況の確認、②治療により全身状態が安定しているか(バイタルサインや神経兆候の安定)、③脳循環や脳圧が安定しているか、④段階的な離床計画と実施中・実施後の評価、です。これらのアセスメントの視点を踏まえ、急性期の早期離床につなげる細やかな観察が重要であり、合併症など様々なリスクを予測し、そのリスクを最小にできるように脳機能とともに循環動態を整える全身状態の管理が重要である、として具体的な看護実践を解説していただきました。
<應本氏と竹末氏の講演の後は、講義室を出て実習室へ移動!>
最後の、「早期離床に関する知識と技術」は、矢木脳神経外科病院の理学療法士、中路一大氏とサポート理学療法士(船本氏と笠原氏)による講義と演習形式で進められました。内容は、「動作のための前提知識の確認」「臥床による弊害と予防」「離床時の介助のポイント」でした。中路氏が冒頭で「関節拘縮は急性期に始まり維持期に完成する」なので、急性期では日常動作を十分に行える身体性を確保することが大事であること。そのためには、短時間のリハビリだけでは絶対に防ぐことはできない。だから、看護師の参画が重要だと話されました。その後、急性期の臥床による呼吸機能や循環機能への影響、骨・関節・筋組織への影響などの基礎的な知識を確認し、実践に入りました。実践では、「起居動作」と「車いす移乗」の技術を確認しました。Bed up座位を経由しての起き上がりには、まずBed上方への移動が大事で、そのために登場した道具が「ビニール袋」です。これを臀部に敷き込むことで体幹の摩擦を軽減し、上半身を抱え込んで引き寄せると軽く上方移動が可能となります。実践している参加者から「わー、軽い!!」「スムーズ!」「力が要らない!」と驚きの声が聞かれました。
それからBed upさせます。この時に背部に手を入れて背部を浮かせるようにするのもポイントです。患者役になった参加者は、背中を支えられているので「あー、楽だわ!」と実感していました。次に車いす移乗では、車いすの位置がポイントです。斜め45度は✖。移動最短距離の0度付近がベスト!患者が立った後に方向転換をさせない移乗を実践しました。まさに「目からうろこ」の体験をした実践演習でした。
今回の研修会は、短時間で盛りだくさんのプログラムでしたが、「あいまいな理解がはっきりした」「実践が良かった」「普段している介助方法の改善点が分かった!」という声もあり、とても充実した研修会となりました。今後参加者がさらに増えることを願い、閉幕となりました。
来年の研修会へのご参加をお願い申し上げます。