大きく分けて嚢状動脈瘤と解離性動脈瘤のふたつがあります。頻度が多いのは嚢状動脈瘤ですが、血管の分岐部が薄くなり動脈圧により風船のように膨れてくるものです。破れるとくも膜下出血を起こします。突然の頭痛、嘔吐が主な症状です。解離性動脈瘤は血管の内側の膜に亀裂が入り、3層ある血管壁の中に血流が入り込み膨れるものです。この時に突然の痛みがあります。これも外に破れるとくも膜下出血を起こします。しかし外に破れず、血管壁内に留まり分枝をつぶしたり、血管腔内に膨れ血管閉塞を起こしたりすることもあります。血管閉塞を起こすと脳梗塞となります。

嚢状動脈瘤については未だに原因不明です。頻度は少ないですが、家族性の発症例はあります。また動脈瘤を持つ方の親族(2親等以内)には約4倍の頻度で動脈瘤が見つかることがわかっています。解離性動脈瘤については、高血圧などの血管ストレスが原因と考えられています。

動脈瘤は薬で治すことはできません。解離性動脈瘤は初期には自然消退することもあります。手術治療には開頭手術と血管内手術があります。開頭手術は全身麻酔を行い、手術室で開頭して手術用顕微鏡で血管を見ながら、直接動脈瘤の頚部(血管から出ているところ)をクリップで挟んでつぶしてしまう(クリッピング術)ものです。血管内手術は多くは血管撮影室(放射線検査室)で行います。全身麻酔をかける場合もありますが、局所麻酔だけで行う場合も多い。マイクロカテーテルという1mm程度の細い管を脳血管の中に進めて動脈瘤の中に入り、その先からコイル状に形状記憶されたものを出して動脈瘤の内部をつめてしまいます。どちらの治療法もうまくいけば、もう破裂する心配はありません。

脳梗塞は大きく分けて3つの種類があります。

1)脳塞栓症 2)脳血栓症 3)ラクナ梗塞

  1. 脳塞栓症は心臓やそれに続く大血管、頚動脈などから血栓(血液の微小な塊)や動脈硬化の断片が血流に乗って脳血管に運ばれて血管を閉塞させて生じるものです。
  2. 脳血栓症は脳血管自身の動脈硬化により血管が閉塞して起こるものです。
  3. ラクナ梗塞は穿通枝とよばれる脳の深部に血流を送る非常に細い血管が閉塞して生じるものです。これは高血圧が特に因果関係が強いと考えられています。

  1. 脳以外の血管や心臓を検査しなければなりません。心房細動という不整脈でも起こりますので、循環器内科で精査が必要です。治療は病変の種類と部位によって大きく異なります。
  2. 動脈硬化の促進因子(糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、運動不足など)について精査し、内服治療や生活改善を行うことが再発の予防につながります。
  3. 内服薬により血圧管理を行い、生活習慣病のチェックを受けましょう。

脳ドックや外来検査で脳血管を見るときには、まず頭部MRAを行います。MRAではかなり細い血管まで見ることができますが、やはり限りがあり、穿通枝までは見ることができません。したがってMRAで血管の狭窄を指摘されたということは、脳の比較的太い動脈(内頚動脈、前大脳動脈、中大脳動脈、後大脳動脈、椎骨動脈、脳底動脈のいずれか)のことを言われたのだと思います。ここでまず確認しないといけないことは、椎骨動脈や前大脳動脈、頻度は低いですが内頚動脈も生まれながらに1本しかない(片側が発達していない)ことがあるということです。もしそうであった可能性が高いならば、それを危険な状態と考える必要はなくなります。専門医に相談してみましょう。

頚動脈は脳へ血流を送る最も太い血管で、下顎の奥を通るあたりで内頚動脈(脳へ血流を送る)と外頚動脈(顔や頭皮に血流を送る)に分かれます(頚動脈分岐部)。表皮から浅いところを通るため、超音波検査で動脈硬化の程度を知ることができます。ここで動脈硬化が進んでいると判断されたら、心臓を含む全身の動脈で動脈硬化が進んでいると考えるべきです。頚動脈の分岐部では、その血管の走行の特徴から、主に内頚動脈の後面を中心に動脈硬化が進行することが多く、進行すると血管壁の中にオカラ状の粥腫(じゅくしゅ)を伴い厚みを増して血管の内腔を細くしてしまいます。これが頚動脈狭窄です。血流が少なくなることも問題ですが、もっと問題なのは粥腫内で出血を起こしたり、自壊することによって内部の成分が血流によって脳血管に運ばれ脳塞栓症を引き起こすことです。

食生活の欧米化などによって日本人の脳梗塞にも占める割合は高くなっています。

脳血管障害とは違いますが、一部の脳腫瘍も脳ドックや通常の診療で偶然発見されることがあります。そのほとんどは良性腫瘍です。良性腫瘍は成長が遅く、脳の腫れも起こさないためにある程度大きくならないと症状を表さないからです。良性腫瘍で頻度の最も多いのは髄膜腫と下垂体腫瘍です。髄膜腫は脳の周りにある(頭蓋骨の内側に貼りついている)硬膜から発生するものです。脳底部という神経・血管の入り組んでいる部分も硬膜で被われていますから、発生部位により症状の出方や手術の難易度が大きく変わってきます。また約5%には発育速度の速いものもあり、臨床的には悪性と考えた方がよいものもあることは事実です。下垂体は両眼の間の奥にあり、成長ホルモンなどの数種類のホルモンを分泌するところです。なかにはホルモンを分泌する細胞が腫瘍化する場合がありますが、その場合にはホルモン異常で症状が出現し見つかります。ほとんどはホルモンを分泌しない細胞が腫瘍化したもので、これは大きくなって上にある視神経を圧迫して視野障害を出すまで症状は現れないので気づかれることはありません。ただし出血を起こし急激に大きくなる(下垂体卒中)ことがあるので注意を要します。